再根管治療は「とりあえずやってみる治療」ではない 熊谷市桶川市羽生市歯科坂詰歯科
- 根管治療
再根管治療は気軽に介入してよいのか?
「根管治療がうまくいかなかったら、もう一度やり直せばいい」
そう考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、私は再根管治療(根管治療のやり直し)こそ、介入する前の診査・診断が非常に重要な治療だと考えています。
なぜなら、再根管治療は「やれば必ず歯を残せる治療」ではないからです。
再根管治療の成功率は74〜84%?
根管治療の予後を検討した代表的な研究の一つに、カナダのトロント大学による一連の研究、いわゆるToronto Studyがあります。
この研究では、再根管治療についておよそ74〜84%という治癒率・成功率が報告されています。
この数字だけを見ると、
「再根管治療をすれば、かなりの確率で歯を残せるのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、この数字をそのまま日本の日常診療に当てはめることには注意が必要です。
Toronto Studyは、日本の一般的な保険診療の治療成績を調査した研究ではありません。大学の専門的な環境で、一定の基準に基づいて診査・治療・経過観察された症例から得られた結果です。
したがって、「再根管治療をすれば誰でも74〜84%治る」という意味ではありません。
大切なのは「治療する技術」だけではない
私は以前、Toronto Studyに深く関わったトロント大学名誉教授のShimon Friedman先生に、再根管治療について直接質問する機会がありました。
その際のやり取りを通じて、私が特に重要だと感じたのが、
「どの歯に再根管治療を行うのか」
という症例選択の考え方です。
つまり、再根管治療では、
「どうやって治すか」だけではなく、
「そもそも、この歯は再根管治療の適応なのか」
を見極めることが非常に重要なのです。
これは私自身が日々の臨床でも強く感じていることです。
「もう一度根管治療をする」が正解とは限らない
根の先に病変がある。
以前に根管治療を受けている。
だから、もう一度根管治療をする。
一見すると、とても分かりやすい判断です。
しかし実際には、それほど単純ではありません。
例えば、歯根破折が疑われる歯、歯周組織の状態が著しく悪い歯、修復が困難な歯、根尖孔外の感染が疑われる症例などでは、通常の再根管治療だけでは改善が期待しにくい場合があります。
また、再根管治療では既存の土台や根管充填材の除去、未処置根管の探索、レッジや穿孔、器具破折への対応など、初回治療にはなかった問題が加わっていることもあります。
だからこそ、「とりあえず開けて、もう一度根管治療をしてみる」ことが、すべての患者さんにとって適切とは限りません。
再根管治療では「治療しない判断」も重要
再根管治療で重要なのは、マイクロスコープを使って治療できることだけではありません。
治療前に、
「この歯には何が起きているのか」
「前回の治療がうまくいかなかった原因はどこにあるのか」
「その原因を今回の治療で取り除ける可能性があるのか」
「再根管治療以外の方法を選択した方がよいのか」
まで考える必要があります。
場合によっては、再根管治療ではなく、経過観察、外科的歯内療法、意図的再植、あるいは抜歯などを検討することもあります。
再根管治療の技術と同じくらい、「再根管治療をしない方がよい歯を見極める診断」が重要なのです。
保険診療・自由診療という違いだけでは判断できません
ここも誤解のないようにお伝えしたいところです。
「保険診療だから治らない」「自由診療だから治る」ということではありません。
治療結果は、歯の状態、感染の程度、解剖学的な難易度、術前の処置、術者の知識や経験など、さまざまな要因に左右されます。
一方、複雑な再根管治療では、CBCTによる画像診断、マイクロスコープによる観察、十分な診査・説明時間などが必要になる場合があります。
日本の保険診療と自由診療では、診療時間、使用できる材料・機器、費用などの条件が異なるため、それぞれの診療体制の違いについて事前に説明を受け、自分が希望する治療内容と合っているか確認することが大切だと考えています。
再根管治療を希望するなら「誰に診てもらうか」も一つのポイント
再根管治療は、根管治療の中でも難易度が高くなることがあります。
特に、
「他院で抜歯と言われたけれど、できれば歯を残したい」
「何度も根管治療をしているが改善しない」
「再根管治療をするべきか、抜歯するべきか迷っている」
という場合には、治療を開始する前に、歯内療法について専門的に学んでいる歯科医師へ相談することも選択肢の一つです。
歯内療法や顕微鏡歯科に関する専門資格・認定資格などは、担当する歯科医師の研修歴や専門的背景を知るための一つの参考情報になります。
もちろん、資格があるから必ず治るというものではありません。
しかし、再根管治療のような複雑な治療では、「治療できるか」だけではなく、「治療すべきか」を判断してもらうことが重要です。
再根管治療は「とりあえずやってみる治療」ではない
Toronto Studyでは、一定の条件下で行われた再根管治療について、およそ74〜84%という成績が報告されています。
しかし、その数字だけを見て、
「再根管治療をすれば74〜84%治る」
と考えるのは適切ではありません。
再根管治療では、治療技術だけでなく、術前の診査・診断、症例選択、そして治療後の修復まで含めた総合的な判断が必要です。
だから私は、
「再根管治療ができる先生」を探すだけではなく、
「この歯に再根管治療をするべきかを診断してくれる先生」を探すこと
も大切だと考えています。
歯を残したいからこそ、すぐに治療を始めるのではなく、まずその歯が再根管治療に適しているのかを十分に診査する。
それが、再根管治療を考える最初の一歩です。
※本記事は再根管治療についての一般的な情報提供を目的としています。治療の適応や予後は歯の状態によって異なり、特定の治療方法や治療結果を保証するものではありません。









