痛みが出る前に再根管治療を検討するという考え方 埼玉県熊谷市桶川市坂詰歯科
- 根管治療
痛みが出る前に再根管治療を検討するという考え方
「今は痛くないので、もう少し様子を見ても大丈夫でしょうか?」
根管治療を一度受けた歯の根の先に「根尖病変」が確認された患者さんから、このようなご質問をいただくことがあります。
もちろん、根尖病変が認められたからといって、すべての歯をすぐに再根管治療する必要があるわけではありません。
治療を行うか、経過観察を行うかは、病変の大きさや変化、以前の根管治療の状態、被せ物の状態、歯根破折の可能性、歯周組織の状態、患者さんの希望などを総合的に判断する必要があります。
しかし私は、「痛みが出てから治療を考える」だけではなく、「痛みがない時点で治療の必要性を検討する」ことも大切だと考えています。
根尖病変の大きさは治療結果に関係する可能性があります
根管治療に関する複数の研究では、治療前に根尖病変がない歯や、病変が比較的小さい歯の方が、治療後に良好な経過を示しやすい傾向が報告されています。
つまり、
「まだ痛くないから大丈夫」
とは必ずしも言い切れません。
痛みの有無と、根の先で起きている炎症の状態は、必ずしも一致しないからです。
根尖外感染という問題
根管治療が難しくなる理由の一つとして、「根尖外感染」があります。
通常の根管治療では、歯の内部に存在する感染源を除去・減少させることを目指します。
一方、細菌感染が根管の外側にまで成立している場合には、通常の非外科的根管治療だけでは対応が難しく、症例によっては歯根端切除術など外科的治療を検討することがあります。
Ricucciらの研究をもとにした報告では、根尖性歯周炎を有する歯の一部に、根尖外バイオフィルムが認められることが報告されています。
ただし、根尖病変が長期間存在すると必ず根尖外感染になる、あるいは根尖外感染があると通常の根管治療では絶対に治らない、という意味ではありません。
「痛くなってから」ではなく「痛くない時」に相談する
患者さんとしては、
「痛くなったら治療すればいい」
と考えるのは自然なことだと思います。
しかし、再根管治療では、治療前の病変の状態などが治療結果に影響する可能性があります。
そのため私は、根尖病変が確認されている場合には、症状が出るまで待つのではなく、痛みがない段階で一度、再根管治療を行うメリットとデメリットについて説明を受けておくことをおすすめしています。
これは、
「病変があれば、痛みがなくてもすぐ治療するべき」
という意味ではありません。
再根管治療そのものにも、歯質の切削、器具除去に伴うリスク、穿孔や破折などの偶発症、費用や治療時間などのデメリットがあります。
場合によっては、治療をせず定期的に経過観察することが適切なケースもあります。
トロント大学歯学部部長の
アニル・キシャン(Anil Kishen) に
2025年六月5日に、直接質問しました。
私は海外の歯内療法分野の専門家とお話しする機会があります。
「根尖病変が認められる歯について、専門的な診断・治療が可能であれば、症状が出る前の早期の段階で再根管治療を検討するという考え方についてどう思うか」
と質問したことがあります。
その際には、歯科医師が適切な診断と専門的な技術を有していることを前提として、無症状の段階で治療を検討するという考え方について同意する趣旨の回答をいただきました。
これは一人の専門家との意見交換であり、すべての症例に当てはまる治療基準を示すものではありません。
大切なのは「痛み」だけで治療時期を決めないこと
再根管治療で重要なのは、
「痛いか、痛くないか」だけで治療の必要性を判断しないこと
だと私は考えています。
根尖病変の大きさや変化、以前の根管治療の状態、歯の保存可能性などを確認したうえで、
「今、再根管治療を行う」
「しばらく経過観察する」
「外科的治療を検討する」
「抜歯を含めて別の方法を検討する」
など、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを比較することが大切です。
痛みが出てから初めて考えるのではなく、痛みがないうちから、その歯を今後どのように管理していくのかを考えておく。
これも、再根管治療における一つの大切な考え方だと思います。
※治療方法や治療結果は、歯の状態、病変の大きさ、過去の治療内容、歯周組織の状態などによって異なります。すべての症例で再根管治療が適応となるわけではありません









