症状がない根の先の膿炎症は放置してもよいのか?病巣感染の考え方
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「痛くないから大丈夫」とは限りません
歯科医院でレントゲンやCTを撮影した際、
「歯の根の先に黒い影があります」
と言われたことはありませんか?
これは、根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と呼ばれる病気の可能性があります。
そして患者さんから、よくこのような質問をいただきます。
「でも、まったく痛くありません。治療しなくても大丈夫ですか?」
確かに、痛みも腫れもなく、何年も普通に噛めている歯であれば、「わざわざ治療しなくてもいいのでは?」と思うのは当然です。
しかし、ここで知っていただきたい大切なことがあります。
「症状がない」ことと「病気がない」ことは、同じではありません。
根尖性歯周炎は、ほとんど症状がないまま慢性的に進行していることがある病気です。
根の先では、何が起こっているのでしょうか?
根尖性歯周炎の多くは、歯の内部に細菌感染が起こり、その影響が歯の根の先にまで及ぶことで生じます。
身体はその感染に対して免疫反応を起こし、細菌が広がらないように戦っています。
その結果として、根の先の骨が吸収され、レントゲンやCTでは「黒い影」として確認されることがあります。
つまり、
「痛くないから何も起きていない」のではありません。
症状がなくても、身体はその場所で細菌や炎症と向き合い続けている可能性があります。
歯の根の感染と「病巣感染」という考え方
ここでもう一つ知っていただきたいのが、「病巣感染(Focal Infection)」という考え方です。
これは、身体の一部分に存在する慢性的な感染や炎症が、その場所だけの問題ではなく、血液や免疫反応などを介して、全身に影響を与える可能性があるという考え方です。
昔はこの考え方が極端に解釈され、
「悪い歯は抜いてしまえばよい」
という時代もありました。
現在の歯科医学は、そのような考え方ではありません。
歯は可能な限り残す。
しかし同時に、
「症状がない感染だから、ずっと放置しても問題ない」とも考えない。
これが現在の考え方に近いと思います。
根尖性歯周炎は「歯だけの問題」なのでしょうか?
近年、根尖性歯周炎と全身の健康との関係について、多くの研究が行われています。
根尖性歯周炎がある患者さんでは、CRP、IL-6、IL-1β、TNF-αなど、全身の炎症に関係する物質との関連が報告されています。
また研究では、
- 心血管疾患
- 動脈硬化
- 糖尿病・血糖コントロール
- 全身の慢性的な低度炎症
などとの関連についても検討されています。
特に糖尿病については、糖尿病が根尖性歯周炎の治癒に影響するだけでなく、根尖部の慢性的な炎症も全身状態に影響する可能性があり、双方向の関係が研究されています。
ただし、「根の病気が心臓病や糖尿病を起こす」と証明されたわけではありません
ここは、とても大切なところです。
現在の研究から、
「根尖性歯周炎があると、必ず心筋梗塞になる」
あるいは、
「根管治療をすれば糖尿病が改善する」
とまで言うことはできません。
根尖性歯周炎と全身疾患との間には「関連」が報告されていますが、直接的な「原因と結果」がすべて証明されているわけではありません。
したがって、患者さんを必要以上に怖がらせる必要はありません。
しかし一方で、
慢性的な細菌感染と炎症が存在している可能性のある歯を、「痛くない」という理由だけで何年も放置してよいのか。
これは、また別の問題だと私たちは考えています。
痛くなるまで待つ。それだけが選択肢ではありません
根尖性歯周炎には、経過観察という選択肢もあります。
歯の状態、病変の大きさ、過去の治療内容、治療によって歯を失うリスク、患者さんの年齢や全身状態などによっては、すぐに治療せず経過を見ることが適切な場合もあります。
しかし、
「痛くないから、とりあえず放置する」
ことと、
「十分に診査・診断したうえで、医学的な理由があって経過観察する」
ことは、まったく意味が違います。
根尖性歯周炎は、症状がなくても感染や炎症が存在している可能性があります。
そのため、治療によって歯を保存できる可能性があり、治療するメリットがリスクを上回ると判断される場合には、
症状が出るまで待つのではなく、可能な限り早い段階で治療介入することも、十分に合理的な選択肢の一つです。
私たちが大切にしていること
私たちは、
「根の先に病変があるから、すべてすぐに治療しましょう」
とは考えていません。
反対に、
「痛くないのだから、何もしなくて大丈夫です」
とも簡単には考えません。
大切なのは、その歯について、
① なぜ病変ができたのか
② 本当に感染が残っている可能性があるのか
③ 今後悪化する可能性はどの程度あるのか
④ 治療によって歯を残せる可能性はどの程度あるのか
⑤ 治療するリスクと、治療しないリスクのどちらが大きいのか
を、一つずつ考えることです。
そして十分な説明を受けたうえで、
「治療する」「経過観察する」
という選択を患者さん自身にしていただくことが大切だと考えています。
「痛くない」は、とても良いことです。でも、「治っている」とは限りません。
根尖性歯周炎は、ときに静かに存在し続けます。
だからこそ、痛くなってから歯科医院に駆け込むのではなく、
症状のない時期に一度きちんと診査し、その歯をこれからどうしていくのかを考える。
それも、ご自身の歯を長く守るための大切な選択ではないでしょうか。
私たちは、歯を簡単に抜くためではなく、できるだけ長く残すためにこそ、症状のない根尖性歯周炎についても真剣に考える必要があると思っています。
埼玉県行田市坂詰歯科医院(さいたま市、熊谷、羽生、加須、久喜、蓮田、鴻巣、伊奈町、佐野、館林、東松山、桶川、古河市、太田市からも来院)が根管治療、マイクロスコープを使った根管治療(根の治療神経の治療)、VPT 、歯髄温存療法 歯髄切断 穿孔修理パーフォレーション ラバーダム防湿を解説します。当院は高崎線JR吹上駅からバスで来院できます。 院長の松田は日本顕微鏡歯科学会認定医、歯を抜かないための治療、歯をできる限り抜かない治療、歯の神経を抜かない歯髄温存療法、自由診療の根管治療。埼玉県川口市(蕨より)芝樋ノ爪出身です。









