奥歯治療前に私の歯にMB2はありますか?」と聞いてみる 熊谷市桶川市加須市深谷市坂詰歯科
- 根管治療
上の奥歯の根管治療では「MB2」の事前説明を
これから上の奥歯の根管治療を受ける方に、ぜひ知っておいていただきたい言葉があります。
それが、
「MB2(近心頬側第二根管)」
です。
上顎大臼歯、特に上顎第一大臼歯は、根管の形が複雑な歯の一つです。
そして、その難しさに関係する重要な構造の一つがMB2です。
上の奥歯には「隠れた根管」があることがあります
根管治療では、歯の内部に存在する根管を確認し、その内部を清掃・消毒していきます。
ところが、歯の内部は単純な構造ではありません。
特に上顎大臼歯の近心頬側根には、通常確認されるMB1とは別に、
MB2という追加の根管
が存在することがあります。
MB2は細く、入口が分かりにくかったり、石灰化によって見つけにくくなっていたり、途中でMB1と合流していたりすることがあります。
そのため、上顎大臼歯の根管治療では、「MB2が存在する可能性」をあらかじめ考えて診査することが重要です。
MB2は珍しい根管ではありません
では、MB2はどのくらい存在するのでしょうか。
研究によって数値には幅があります。
2025年に報告された日本人642名、上顎第一大臼歯833歯をCBCTで調査した研究では、52.9%にMB2が確認されました。
一方、同じ論文では、過去の日本人を対象とした研究で77.5%という報告があることも紹介されています。
また、世界各国の研究をまとめた報告では、上顎第一大臼歯のMB2の頻度は約70%とされています。
つまり研究方法、年齢、集団などによって数字は変わりますが、
上顎第一大臼歯のMB2は、決して珍しい構造ではありません。
そのため当院では、上顎第一大臼歯を治療するときには、MB2が存在する可能性も考慮して診査することが重要だと考えています。
なぜMB2を見つけることが大切なのでしょうか?
MB2が存在していても処置されていない場合、その根管内部に感染が残存する可能性があります。
そして、未処置のMB2と根尖性歯周炎との関連を示した研究があります。
2023年に報告されたCBCT研究では、未処置MB2が認められた上顎第一大臼歯の54.8%に根尖性歯周炎が認められました。
別の研究では、未処置MB2を認めた歯の67.3%に根尖性歯周炎が確認されたと報告されています。
つまり、
未処置のMB2が存在する歯では、50%を超える割合で根尖性歯周炎が認められた研究があります。
これは、上顎大臼歯の根管治療を考えるうえで重要なデータです。
ただし、ここには大切な注意点があります。
この数字は、
「MB2を治療しなければ50%以上の確率で治療に失敗する」
という意味ではありません。
これらは主としてCBCT画像を用いて未処置MB2と根尖性歯周炎との「関連」を調べた研究です。
根管治療の予後には、治療前の感染状態、根管形態、修復状態、歯周組織の状態など、さまざまな要因が関係します。
したがって、
「MB2を治療すれば必ず治る」
「MB2を治療しなければ必ず失敗する」
と考えることも適切ではありません。
それでも、MB2を含めた根管形態を適切に診査することは、上顎大臼歯の根管治療における重要なポイントの一つです。
MB2の診査を助ける「CT」と「マイクロスコープ」
MB2は非常に小さく、肉眼や通常のレントゲンだけでは確認が難しいことがあります。
そこで診査・治療を補助するのが、
歯科用CT(CBCT)とマイクロスコープです。
CTは歯根や根管の形態を三次元的に評価する助けとなります。
2017年の研究では、CBCTのみではMB2が69%で確認され、実際に歯を開けて探索すると78%、さらにCBCT情報を参考に再探索すると87%まで検出率が上昇しました。
興味深いことに、最終的に歯根を削って調査すると92%にMB2が存在していました。
この研究からも、MB2は「存在していること」と「臨床で見つけられること」が必ずしも同じではないことが分かります。
ただし、この研究自体も「すべての患者さんに治療前CTが必要というわけではない」としています。
CT撮影には放射線被ばくもあるため、歯の状態や通常の診査結果を踏まえて必要性を判断することが大切です。
マイクロスコープについても同様です。
拡大して歯の内部を観察できることはMB2を探索するうえで有用ですが、
マイクロスコープがあるだけでMB2を必ず発見・治療できるわけではありません。
設備はあくまでも診査・治療を支えるための道具です。
治療前に「私の歯にMB2はありますか?」と聞いてみる
これから上顎大臼歯の根管治療を受けるのであれば、担当の先生にMB2について質問してみるのもよいと思います。
たとえば、
「この歯にはMB2が存在する可能性がありますか?」
「MB2についても確認してもらえますか?」
「必要になった場合、CTやマイクロスコープを使いますか?」
「MB2が見つかった場合には、どのように対応しますか?」
このような質問です。
大切なのは、
「MB2を治療できる先生かどうか」を患者さん自身が判定することではありません。
担当する歯科医師から、MB2を含めた根管形態についてどのような説明があり、どのような診査・治療を予定しているのかを確認することです。
当院でもMB2を重要なテーマとして取り組んでいます
当院でも上顎大臼歯の根管治療では、MB2を重要な解剖学的構造の一つとして考えています。
必要性を診断したうえで、CTやマイクロスコープなどを用いて診査・治療を行います。
また、院長は根管治療をテーマとした歯科医師向けの講演・研修活動を年間約30回行っており、その中でMB2の探索や治療方法について取り上げることもあります。
こうした講演・研修活動を通じて得られる知見も、日々の診療に還元できるよう継続して研鑽しています。
なお、講演回数や設備の有無が、個々の患者さんの治療結果を保証するものではありません。
上の奥歯の根管治療では「MB2」を知っておいてほしい
上顎大臼歯の根管治療を受けるとき、
「MB2という根管について説明を受けたか」
ということも、治療を理解する一つのポイントになると当院では考えています。
上顎第一大臼歯では、MB2は決して珍しい構造ではありません。
そして、未処置MB2と根尖性歯周炎との関連を示す研究もあります。
だからこそ、
MB2が存在する可能性を考える。
必要に応じて適切な画像診断を行う。
拡大視野で歯の内部を確認する。
そして、患者さんにその内容を説明する。
こうした一つひとつの積み重ねが大切です。
「CTがあるから大丈夫」
「マイクロスコープを使うから大丈夫」
ではありません。
そして、
「MB2を治療すれば絶対に治る」
というものでもありません。
設備だけではなく、複雑な根管形態を想定して診査・診断し、その内容を患者さんと共有しながら治療を進めること。
上の奥歯の根管治療を受けることになったら、
「MB2はありますか?」
ぜひ、この言葉を覚えておいていただければと思います。
※本記事は根管治療に関する一般的な情報提供を目的としています。MB2の存在頻度、診断の可否、治療方法および治療結果は、患者さんや歯の状態によって異なります。また、CT撮影やマイクロスコープの使用についても、診査・診断のうえ必要性を判断します。









